画家 今泉 健壽氏へ

 この度の画集発刊、誠におめでとうございます。

 今泉健壽氏の初の画集発刊に際し、改めて初期の頃から現在に至るまでの作品を拝見する事ができ、今泉健壽と云う画家としてのセンスと、生まれながらに備わった絵心が一貫して見てとれ、すがすがしく、気持ち良い作品の数々に、縁あって一緒に勉強する機会を得た者としては、何よりも誇らしい思いで一杯です。  
一緒に勉強を始めた当初 「いずれは大作にも挑戦してみたいです!」とおっしゃっていた言葉通り、みるみる上達し、50号の大作にも挑戦している姿を拝見するに至っては、たいへんたのもしく、大きな身体同様、存在感と共に、作品そのものの豊かさも加わり、まさに大きく飛躍しようとされています。
 今泉氏は小学生の頃は虚弱体質で、学校行事や、朝礼免除などの特典を与えられ、その間、絵を描いていたり、担任の先生から放課後絵の指導を受け、数々の賞を授賞するなど、当時の環境が現在の絵画の根底にある事は明白です。
 実は私の小学生の頃も担任の先生の影響が大きく、その先生との出会いが後の私の絵画人生の大きな根幹をなしている事を考えると共通するものがあり、この話を聞いた時、驚いたと同時に更に今泉氏への親しみがわいた事を思い出します。  その後、今泉氏は造園の仕事につき、設計パースの勉強をされた事が大きく影響しています。
 絵画の造形解釈がこのことでしっかりと身に付いたと思われ、どの作品も叙情的でありながら、基礎力がしっかりしている所がすばらしい。 特に風景画においては、その才をいかんなく発揮され、皆と行く写生でも、多くの人が構図や、近景の処理で苦心するところ、見事に表現されています。
 京都下鴨神社「糺の杜」で描き、見事に授賞された作品を拝見しましたが、大変難しい所を叙情性、構築性合いまった表現に、お見事!と脱帽した次第です。 自然主義と云う余りにもオーソドックスな表現でありながら、実はきわめて奥の深い分野に挑戦する画家が多いなかで、今泉氏が探究し、自らの絵画で実現しようとしているものは何なのか、お会いするたびに考えておりました。
 ともすると技術やテクニック重視の作画になりがちな具象絵画の世界において一貫して自然主義を貫き、なにげない表現に裏打ちされた厳しい造形への鍛錬は、子供の頃から培われた豊かな心と、造園と云うお仕事柄もあっての事と思うのですが、樹木や、自然、又人間への今泉氏自身の愛情の深さの表れであろうと、尊敬してやみません。  

この初の画集発刊が更なる画業の発展への第一歩となるであろうと確信しております。
どうか健康に留意され、第二刊、第三刊と発刊されることを期待し、益々のご健筆をお祈り申し上げます。

                日展理事  湯 山 俊 久